今年の9月、大阪市環境局の河川事務所に所属する職員が、河川の清掃作業中に集めたゴミから見つかった金品を長年にわたり着服していた事が、或る男性市職員からの内部告発によって明るみに出た。この男性市職員が、拾得物を物色し着服する様子などを隠し撮りした映像をテレビ局に提供するなどしたことで市も本格的な解明に乗り出し、実態が浮き彫りになったのだ。
「内部告発したのに…」免職の大阪市職員提訴へ(
読売新聞)
Yahoo! ニュース より
本件について、大阪市から関係者の処分が発表された。懲戒免職6人、停職処分21人という大規模なものであったが、懲戒免職になった6人のなかには、本件を内部告発した男性市職員も含まれていた。
大阪市の平松市長による説明では、内部告発した男性市職員を懲戒処分した理由として、以下の内容をを挙げている。
1.この男性市職員の着服も発覚した。
2.職場で脅迫的な言動をして職場の秩序を乱していた
3.事務所内の備品の破損
ただし下の記事によれば、着服については男性市職員が「ここで同僚と話を合わせないと、着服の全体像を明らかにできない」と考え、同僚と共に10万円余りが入ったカバンを拾った際に半分の5万円を一旦受け取った上で、別の職員の立ち会いのもとで、抜き取った元のかばんに現金を戻して廃棄したというのが経緯とのこと。
内部告発者を含む6人免職、21人停職 河川事務所現金着服で 大阪市(
Asahi Judiciary)
この経緯は市側も認めているが、平松市長の言によれば「最終的に捨てても、いったん支配下に置けば遺失物等横領罪は成立すると弁護士から指摘を受けた」という。
男性市職員は、自らへの懲戒免職処分を不服として、処分取り消しを求める訴えを起こす意向を明らかにしたそうだ。
告発した男性市職員が懲戒免職処分にされた理由については詳報を待ちたい部分もあるので、ここからは一般論を述べさせていただく。
日本には内部告発を行った労働者を保護するため『公益通報者保護法』が定められている。内部告発者に減給や解雇といった不利益が及ばないようにするためである。
公益通報者保護法Wikipediaとはいうものの日本では「どんなにダメな主君・組織であっても最後まで忠誠を尽くすのが善」とする「忠臣は二君に事(つか)えず」の思想が根強いため、内部告発者は“裏切者”扱いされてしまい、結局は退職まで追い込まれてしまうケースが見られる。そして組織側には、問題点の是正よりも再び裏切者を出さぬための風紀粛清に力を入れているかのような対応が散見される。
しかし戦国時代などは家名の存続・血統の維持が最優先事項だったこともあって、主君の言動や主家の行いに問題点があれば
「主 主たらずば臣 臣たらず! さあ理由(わけ)を!!」(by.前田慶次:花の慶次-雲のかなたに- より)

美術刀剣-模造刀 前田慶次郎利益拵え『大輪鍔 三本杉』
といって家臣が主君に詰め寄ったり、主君を氷風呂に叩き込んで出奔したり(笑)という行いは、不届きでも裏切りでもなかった。そうやって、より良い主君・より将来性のある主家を選ぶ権利が家臣側にはあったのだ。
しかし、こうした思想は為政者にとって自身の立場を危うくするので都合が悪い。よって江戸時代には朱子学的見地から「忠臣は二君に事えず、貞女は二夫を更(か)えず」(忠義深い家臣は一度仕えるべき主を決めたら他の主君に仕えることはない。貞操の堅い女は夫の死後に再婚して他の男を夫とすることはしない)という思想が広められ、現在に至っているのだ。
もちろん「忠臣は二君に事えず」の思想は治世を安定化させる効用があるのも事実で、江戸時代が260年間の太平の世となった一因でもある。しかし大不況下で他国との経済戦争が激しい昨今は、いわば現代に蘇った戦国時代。「忠臣は二君に事えず」の思想に固執していると、末期の江戸幕府のようになりはしないだろうか?
◆最後までお読み頂きありがとうございました。

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「内部告発したのに…」免職の大阪市職員提訴へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101223-00000305-yom-soci
posted by 只今(橘カヲル) at 20:44| 東京 ☀|
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