
麻布十番・浪花家総本店
過日、麻布十番まで足を伸ばしてランチを済ませたあと
「麻布十番といえば、ここは外せないよなぁ」ということで、鯛焼きの名店『浪花家総本店』さんを尋ねることにした。人形町の『柳屋』さん、四谷の『わかば』さんと共に東京鯛焼き御三家の名を頂戴している説明不要の名店であり、地方の方でも御土産という形で食べた経験を持つ方も多いことだろう。
同店は明治時代末期の1909(明治42)年の創業で、屋号は初代の出身地である大阪に因む。初代の神戸清次郎氏は銀行家の息子であったが、成功を夢見て上京。当初は今川焼き(地方によっては回転焼き、大判焼きなどとも)を売っていたが、他店との差別化を図るため形状を変えることを思いついた。
まず亀の形を模した亀の子焼きを作ったが売れ行きは上がらず。その後も様々な形を試したが、
縁起物として珍重されていた上に高価で庶民の口には中々入らなかった鯛の形を模したところ、これが大当たりしたため鯛の形に落ち着いたという。つまり同店は鯛焼きの生みの親であり、元祖というわけだ。
ちなみに同店が紹介されるときに必ず出てくるのが、450万枚という日本におけるシングル盤の売上記録としては未だに破られていないセールスを記録している超ヒット曲
「およげ!たいやきくん」のモデルであるというお話。

およげ!たいやきくん(DVD付)
これは
ジャケットにも描かれている鯛焼き屋のマスターの姿が、
コック帽と蝶ネクタイをトレードマークとした現在同店の会長職にある神戸守一氏をモデルとしているところから来ている。
さて到着したはいいものの、『浪花家総本店』さんで鯛焼きを購入しようとしたら、ややもすれば数時間待ちなどということもザラである。地元民でもなければそんな時間的余裕など無いという方も多いことだろう。そんな皆様に耳寄り情報をご紹介したい。

ナニワヤ・カフェ (Naniwaya cafe) (カフェ / 麻布十番)
同店は昨年(2007年)店舗ビルを改装したのだが、二階に、麻布十番の別の場所で営業していた『ナニワヤ・カフェ』が移転してきたのだ(写真左)。常に戦争状態のような『浪花家総本店』店頭とは異なり、こちらでは空調の効いた落ち着いたスペースで(写真右)、鯛焼きはもちろんのこと各種飲み物やヤキソバのような食べ物メニューもいただける。

たいやき(1個)セット(たいやきとドリンクのセットで600円:税込)
鯛焼きを単品で注文することは出来ないので注意! しかし『浪花家総本店』さん奥のイートインスペースで慌しく食べるより、
折角この地まで来たのだからドリンク代を支払ってもゆっくり落ち着いて食べるほうが良いと思う。なにしろ10分ほど待てば確実に『浪花家総本店』と同じクオリティの鯛焼きが食べられるのだ。焦ることはない。

さて、程なくして運ばれてきたら早速手にしてみよう。
少々熱くても素手で掴むことをオススメする。すると
掌を通してパリッと焼きあがった皮の心地よさが電流のように脳に伝わり、凡百の鯛焼きとはレベルが違うことを認識するだろう。人間が味を感じるとき、味覚のほかに匂い(嗅覚)や見た目(視覚)も重要な構成要素になるが、手触り(触覚)もまた味の一部なのだ。

そして口にしてみれば、
皮のパリッとした感触と焼きたてゆえの香ばしい薫りが素晴らしく、普段御土産として食べていた浪花家の鯛焼きとは違うことに驚かれるのではないだろうか。それも道理で、
御土産として購入された鯛焼きは持ち運びの最中に鯛焼き自身から発せられる湯気によって皮がふやけてしまうし、香気も失せる。
オーブンを用いてトースターの要領で加熱すればある程度解消されるものの、
焼きたての出来には及ばない。
また
餡が透けて見えるほど皮が薄く焼きあがっていることからも分かるように、
餡子の量が外見から想像されるよりも遥かに多い。同店の餡は粒餡を煮て練り上げる過程で自然に潰れた潰し餡と呼ばれるもの。練り上げに注力すれば漉し餡になってしまうし、小豆の皮を潰さないように気を配ると粒餡のままだから、この加減は熟練の技の賜物なのだ。
たかが鯛焼きと侮る無かれ。餡の滑らかな舌触りと、時折口中をくすぐる小豆皮の感触、そして小豆本来の優しい甘さ…皮の出来のよさ、ドリンク(今回はミルク)との相性のよさも含め
『浪花家総本店』の鯛焼きは非常にグレードの高い和菓子なのである。
こうした細かい味の分析ができるのも『ナニワヤ・カフェ』で落ち着いて食べるからこそ。麻布十番までお越しの際は、ぜひ同店でゆっくりと鯛焼きを味わって戴きたい。
◆最後までお読み頂きありがとうございました。

←管理人の励みになります。よろしければクリックをお願いしますm(_ _)m
posted by 只今(橘カヲル) at 00:01| 東京 ☔|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
食:スイーツ・パン
|