

学芸大学駅まで徒歩数分の距離、東京東横線のガード沿いの道(詳しい場所は上部リンク先参照)で『越前おろしそば みぞれ』の看板を発見。現在の住まいが自由が丘である関係から二駅隣の学芸大学駅周辺にもよく訪れるのだが、ここに蕎麦屋があるとは気がつかなかった。“越前おろしそば”の謳い文句に誘われ、入店してみることに。


店内の様子
店内は椅子席×6と四人掛けテーブル席×1という小規模店舗。和風テイストの赴きある店内にはムーディーな音楽BGMとして流れている。その良質な雰囲気に加えて入り口近くに石臼を発見したとき、自分は「これは良いお店を発見したかもしれないぞ」と心躍った。

鬼おろしそば(950円:税込)
スタッフの方と他のお客さんとの会話によれば、この地に開店して一年ほどとのこと。そして福井県で蕎麦といえば太めの平打ちで、大根おろしを絡めて食べるのが一般的なのだとか。その話を小耳に挟んだため、細麺と太麺の選択で太麺を選んだ上で『鬼おろしそば』を注文してみた。
荒めにおろされた大根の白さが、玄蕎麦(黒い殻――果皮を被ったままの蕎麦の実のこと)を挽いた蕎麦粉で打たれたソバの黒さに映えて美しい。その他の薬味は小口切りにしたネギに刻み海苔、そしてカツオ節と、別皿に盛られた三つ葉に酢橘。なお写真だと蕎麦の量が少ないように感じるかもしれないが、これは両手で抱えるほどに大きい器を使っているため相対的にそう見えるだけであることを申し添えておく。

出雲蕎麦のように、醤油ダレ(同店ではツユをタレとも称している)を蕎麦にかければ準備完了だ。

口に入れた際の第一印象は「太麺にして正解だった!」である。荒くおろされた大根の辛味とシャキシャキした歯ごたえに対抗するには、蕎麦の自己主張も相応に強くなければならない。太い平打ち麺を咀嚼するたびに発せられる蕎麦の香りと味が、荒くおろされた大根とマッチして、互いに風味を引き立てあってとても美味しい。これは「食べる」ことを「手繰る」と表現するような細麺の蕎麦にはできない芸当である。
もちろん自分は「手繰る」タイプの蕎麦も大好きだが、こうした「食べる」タイプの蕎麦にも魅力を感じる。稲作に向かない土地でも栽培できたために人々の飢えを救う食物として重宝されてきたからこそ、全国各地に様々な蕎麦文化が花開いたのだ。それは優劣をつける類の問題ではなく、それぞれの魅力を楽しめば良いものだと思うからだ。
良いお店を発見できた喜びも手伝って、とても満足だった。福井の銘酒も取り揃え、夜は酒肴も用意されているようなので、皆様も足を運んでみてはいかが?
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
