彼女は、高校2年の昨年11月に発症し、野球部のマネジャーをやめざるを得なかった。今年4月、県内の社会人野球クラブにメッセージを送ったことがきっかけで、このクラブのマネジャーを務めることになり、テレビ電話を通じて病床から選手たちにげきを飛ばす一方、高校球児を応援しようと、グラウンドなどにヒマワリを植える「夢咲く花プロジェクト」という活動を始めた。クラブもこのマネジャーの存在を信じて活動に協力、希望者にはクラブを通じて種を郵送した。
というもので、報道された時は大きな反響を読んだ。ところが……
茨城新聞、7月の報道を訂正=「白血病の元女子マネ」実在せず
(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014102400355
感動記事の女性、実は架空人物…茨城新聞社謝罪
(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141024-OYT1T50130.html
本紙7月報道、ヒマワリで球児応援企画 闘病の女性実在せず
(茨城新聞)
http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14141235033085
その後の取材で、元マネジャーが実在しない架空の人物と分かったという。当時、新聞社は元マネジャーへの直接取材を試みたが病状の悪化を理由に断られ、元マネージャーの代理人を名乗る20代女性と『LINE』で遣り取りして記事にしたとのこと。
その後、元マネジャーが死亡したとの情報が入り、追跡取材したところ“代理人”だった20代女性による狂言だと判明。茨城新聞は訂正記事を出すに至った。女性は記者に「誰かに認めてもらったり、心配してもらったりしたくて軽い気持ちで始めてしまった」と話したという。
虚言で他人を振り回した女性の方も困りものだが、本件については「ソース(情報源)の裏付けを取る」という報道における基礎中の基礎をスッ飛ばした茨城新聞が杜撰すぎる。なにしろ、病状の悪化を盾に取られたとはいえ、LINEの遣り取りだけを情報源にしているのだ。
ではなぜ茨城新聞が、このような初歩的なミスを犯したのかと考えた時に「夏の甲子園に合わせ、なにか野球がらみの美談――もっと言えば“お涙頂戴”的な記事を紙面に載せたい。いや載せないと紙面が盛り上がらない。いや、そういう記事を載せなければならない……」といった三段論法があったとするのが妥当だろう。そんな思考に囚われているから今回のような事が起こるのだ。
「飢えた魚は猫でも釣れる」
(by.ウラタロス憑依良太郎=仮面ライダー電王ロッドフォーム:仮面ライダー電王 より)

装着変身 仮面ライダー電王 ロッドフォーム
とはこのことか。
とはいえ今回の件、思いのほか根が深いと思う。「日本のマスメディアは報道機関ではなくプロパガンダ(政治・思想宣伝)機関である」との批判は以前からあるが、今回の件はまさに「事実に基づいて報道する」のではなく「報道したい事柄に沿った事実を探した(そしてそれは虚偽だった)」点で、その批判を裏付けるものとなったからだ……。
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
