2014年05月18日

畳文化の衰退に感じる危機感と寂しさ

日本の住宅から和室が数を減らして久しい。特に最近では、マンションのみならず一戸建ての住宅でも全室フローリング(木質系素材の床)だったりするケースが珍しく無くなった。

中学生からイグサ「臭い」の声 日本の畳文化は消滅してしまうのか…
(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/141213/wlf14121319240001-n1.htm

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産経新聞より

それに伴う畳需要の減少を記事は伝えている。イグサ(藺草)で作る畳表(たたみおもて:畳の表面部分)の国内需要量はここ20年で3分の1に、また国内のイグサ生産農家と畳店はここ10年で半減したとのこと。経年劣化・自然摩耗に対応するため定期的な修繕を必要とする畳よりフローリングの方が経済合理性が高い事もあるが、何より日本人の生活スタイルが欧米化して久しいのが畳需要が減った主因ではないか?

ただ畳需要の減少は今に始まったことではない。記事中では畳需要減少・畳文化衰退の象徴として、張り替えた畳が放つイグサの香りを女子中学生が「臭い」と言ったことを取り上げているが、私にも同様の経験がある。ただし近年の話ではない。私が高校生のころだったから、かれこれ20年以上昔の出来事だ。

以前にも何度か書いたことがあるが、私の実家は飲食店だった。あるとき総ての客間の畳を張り替えたのだが、畳を張り替えた部屋に入った小学校低学年ぐらいの幼児が「お母さん臭いよー!」と言い放ちながら飛び出してきたのだ。私は、張り替えた畳が放つイグサの香りを「いい香り」と認識していたので、その光景を見て愕然としたのを今でも覚えている。

まぁ、その幼児も本気でイグサの香りを悪臭と思った訳ではなく、今まで嗅いだ事のない臭いが室内に充満していたので混乱しただけだろうとは思う(というか、そうだと思いたい)。だが20年以上前から「張り替えた畳の香りに馴染みのない人」、もっと言えば「身近に畳がない生活を送る人」は存在したのだから、現在ではもっともっと多いはずだ。

身近に畳がない生活を送る人が増えれば

「人は日に米は三合、畳は一畳あれば十分 そんなことより一献くれまいか?」
(by.前田慶次:花の慶次-雲のかなたに- より)

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模造刀(美術刀) 戦国武将シリーズ  前田慶次郎利益拵【まえだけいじろうとしますこしらえ】

というセリフにピンと来ない人も増えるわけで、危機感と寂しさを感じる今日このごろ。

もちろん畳業界は私以上に危機感を抱いており、環境対策などを目的に畳の普及を図る「畳ビズ」商品を開発して畳のリラックス効果などをPRしたり、伝統文化を見直す行事として「畳供養」を始めたりしていることが記事中にて紹介されている。

正直なところ、日本人の生活スタイルの欧米化は今後も進行こそすれ停滞・逆行はしないだろう。一般的な畳は、それこそ神社仏閣ぐらいでしかお目にかかれなくなる日が来るかもしれない。だから畳の将来については畳ビズ商品のような別の用途を研究・模索していくのが一番懸命な策だと思う。

でも本当は、張り替えた直後の畳にゴロ寝する喜びを、もっと多くの人に知って欲しいなぁ……。


◆最後までお読み頂きありがとうございました。
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posted by 只今(橘カヲル) at 08:45| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑感:社会 | 更新情報をチェックする
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