そこで前回・前々回では攻略できなかった輸送駅弁の攻略に挑んだ。あまりにも種類が豊富すぎて、どれを選ぶか大いに悩んだのだが、写真映えも考慮し、容器に特徴のあるものをメインに3点ピックアップして帰路についた。

上州D51弁当(900円:税込)
まずは群馬県・高崎駅の『上州D51弁当』。「じょうしゅうでごいちべんとう」と読む。高崎駅を起点とする上越線などで現在も運用されている、国鉄D51形蒸気機関車498号機を想起させる蓋付きの黒い円筒形プラスティック容器が秀逸。同車両のナンバープレートが描かれたリユース箸がついているのもポイントが高い。
内容的に目を引くのは、竹炭パウダーが炊き込まれて黒く染まったご飯。蒸気機関車の燃料である石炭に因んだと思われる。具は舞茸佃煮、榛名豚チャーシュー、鶏肉焼き、海老の含め煮、椎茸煮、タケノコ煮、カマボコ、栗甘露煮、かりかり梅、うずら玉子と多彩。各々の味も良く「特筆すべきは容器のアイデアだけ」で終わっていないのは、『だるま弁当』を筆頭に良質の駅弁を数多く世に送り出している製造元・高崎弁当株式会社(たかべん)の面目躍如。

923形T5編成ドクターイエロー弁当(1,050円:税込)
次は兵庫県・新神戸駅の『923形T5編成ドクターイエロー弁当』。新幹線の線路や架線の状態をチェックする特殊車両『ドクターイエロー』の先頭車を模した陶器製容器の中に、車体色の黄色に因んだカレーピラフと、オムレツ、エビフライ、スコッチエッグ(茹で卵を挽肉で包みパン粉をつけて揚げた料理)サツマイモの甘煮、スパゲッティ、ニンジンの煮物、インゲンが入っている。
お子様ランチ的な内容なので子供への土産にも良いが、容器の底が深いために結構なボリュームがある上、容器が陶製のため重いし、なにより大人の舌にも耐えうる味なので、実は「鉄ちゃん」がメインターゲットか?

稲荷寿し(500円:税込)
最後は愛知県・豊川駅および豊橋駅の『稲荷寿し』。歴史と伝統を感じさせる掛紙を外すと、容器の中には一般的なものよりも少々油揚げの色が濃い目のいなり寿司が7個入っている。これ以外は小パック入りの紅ショウガだけという至ってシンプルな構成。
だが、このいなり寿司が美味しい。味付けは濃く、甘い部類に入るのだが、後に尾を引くいやらしさが皆無。そして私は、これほど丁寧に油抜きされた油揚げで作られたいなり寿司を初めて食べた。スーパーやコンビニのいなり寿司しか知らない人には、ぜひ食べてみて欲しい。駅弁にしてはお手頃な価格もセールスポイントだ。
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
