FX業界屈指の大手企業、株式会社外為どっとコム(以下:外コム)に対し、関東財務局から「平成22年10月1日から平成22年10月31日までの間、店頭デリバティブ取引に係る全業務(顧客取引の結了のための取引等を除く)の停止」という業務停止命令が下された。ちょっとピンとこないが、つまり「10月1日から1ヶ月間は、例えば出金申請処理のような、顧客が取引を終了させるために必要な業務以外が禁止される」ということで、相当に重い処分といえるだろう。
実は外コム、本年7月中旬にユーロ円、9月上旬にドル円とユーロ円で市場で実際に取引されている水準とは大きく掛け離れた為替レートを誤配信してしまって、決済される必要のなかった顧客のポジションが決済されてしまうなどといった混乱を招いている“前科”がある。そのため9月10日に業務改善命令が下っていたのだ。
【業務改善命令】
金融庁が金融機関に対して行う行政処分の一つ。金融機関の法令違反や、財務内容の悪化などが明らかになった際に、改善・再発防止が必要な点を指摘し、業務改善計画の提出を求める。
出典:大辞泉
しかしその後もシステムの不具合は改善されなかった。9月15日には、顧客の損失拡大を防ぐために一定以上の損失が出たポジションを強制的に決済するロスカット機能が顧客約1,000名に対し誤発動。さらにシステムに処理遅延が発生して取引開始が約1時間30分遅れてしまった。
このトラブルによって失われた顧客のポジションを元に戻す作業にシステムを集中させるためもあって、外コムは顧客の口座に対して一時的に新規注文の発注制限ならびに入出金制限をかけた。システムへの負荷を軽減させ、事態の収拾を一刻も早く行うための措置だったのであろう。
しかしなんという運命の悪戯か、この日に約6年半ぶりとなる政府・日銀による為替介入が行われたのだ!
政府・日銀が円売り介入 6年半ぶり、単独で
(日本経済新聞)
為替相場が、まるで
「『キングクリムゾン』の能力の中では、この世の時間は消し飛び……そして全ての人間は、この時間の中で動いた足跡を覚えていないッ! 『空の雲は、ちぎれ飛んだ事に気づかず!』……『消えた炎は、消えた瞬間を炎自身さえ認識しない!』 『結果』だけだ!!この世には『結果』だけが残る!!」
(byディアボロ:ジョジョの奇妙な冒険第六部 より)

ジョジョの奇妙な冒険 56 (ジャンプ・コミックス)
スタンド能力によって上昇の『過程』が吹き飛んで、上昇した『結果』だけが残ったかのような猛烈な急上昇となったのに、外コムの顧客は新規でポジションを構築することも入出金もできなかったのだ。しかも誤決済されたポジションが戻っても今の為替水準では逆に大損するばかり……。
長々と書いてきたが、業界屈指の大手企業がこのような醜態を晒してしまっては、監督官庁としても業務停止命令という厳しい措置を取らざるを得ないだろう。
【業務停止命令】
金融庁が金融機関に対して行う行政処分の一つ。金融機関の法令違反が著しい場合や、財務内容の悪化が深刻な場合などに、期限付きで業務の一部または全部を停止することを命じる。
出典:大辞泉
外コムはTVCMはもとよりWebや雑誌、交通広告などなど、広告宣伝に事のほか力を入れてきた。FXを知らなくても、外コムの名前や会社のロゴは「どこかで見たことがある」人も多いはずだ。とにかく知名度を上げ「みんなが知ってる外コム、だからみんなに選ばれる外コム、だからあなたも外コムを選んでね」という三段論法を徹底することで業界を代表する企業へ成長してきたのが外コムだ。
しかしその一方でシステム関連への投資が甘かったために、このような事態に陥ってしまったのではないだろうか。顧客から大事な資産を預かって、注文を市場へ取り次ぐ業務を生業とする以上、もっとも基本的な事項は「システムを安定稼動させて顧客の注文を確実に取り次ぐ」ことのはずである。
今回の業務停止命令が外コムの「終わりの始まり」になるか、それとも新生への第一歩となるか、注目したい。
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
外為どっとコムに業務停止命令=FX取引全般で1カ月―関東財務局
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100917-00000119-jij-pol

