
かれー麺 実之和 六本木店(ラーメン / 六本木、六本木一丁目、麻布十番)
六本木通り沿いに“カレー麺”という見慣れぬ単語を掲げる『かれー麺 実之和』さんを発見。「いわゆるカレーラーメンのことかな?」と興味を引かれた。
カップ麺では目にする機会の多いカレーラーメンであるが、料理としてカレーラーメンを饗する店は東京ではめったに見かけない。日本人にとって「海外産なのに国民食」の双璧ともいえるカレーとラーメン。その2つが融合したカレーラーメンは、もっとメジャーな料理になっていても不思議ではないはずなので、考えてみれば意外である。
思うにカレーもラーメンも皆に愛されている料理ゆえにどうしても好みに差が生じる。ましてそれら2つを同時に食べることになるカレーラーメンとなれば「普遍的に受け入れられる味」を生み出すのは難しいと想定される。故にカレーラーメンに挑戦する店が少ないのではないか。

店内の様子
――そんなことを考えながら席についた。店内はレトロとムーディーが同時に存在する異空間。ラーメン屋というよりショットバーに雰囲気が近い。それも道理で、東京を代表する歓楽街である六本木にふさわしく、夜の同店は居酒屋として営業しているためだ。なお壁面に描かれた絵によれば夜の部のイチオシメニューはカレー味の鍋である。

メニュー
ランチメニューに定食ものも用意されているのが居酒屋風。魅力的なメニューもあったが次の機会に譲ることにした。ラーメンのバリエーションとしてはカレーラーメンとその辛口バージョン及び、カレーつけ麺と冷やしカレー麺と、いずれもカレー味。
本項執筆のために調べたところによれば、同店は千葉県で50年以上に渡ってカレーラーメンを作り続けているお店が東京にオープンさせたお店とのこと。東京進出にあたり他に味のバリエーションを増やさず、ラーメンはカレー味一本で勝負をかけてきたのだから「よほど味に自信があるに違いない…」と期待を深めた。

かれー麺(750円:税込 ライスはランチタイムのサービス)
さて、それほど待つことなく運ばれてきたのは、黒い器に並々と盛られたカレーラーメン。

スパイシーであるが、決して出しゃばっているわけではないカレールーの芳香を鼻腔から吸い込むと心が躍る。

紙エプロンを装着し、いざ食す!

カレーと麺類の相性が良いのはカレー南蛮で立証済み。基本的な味の組み立てはカレー南蛮のそれである。おそらく最初の発想は「カレー南蛮の蕎麦をラーメンに替えてみたらどうだろう?」だったであろうことは想像に難くない。
しかし一般的なカレー南蛮がカレールーをラーメンにかけるタイプなのに比べ、同店のカレーラーメンはスープそのものがカレー味。またカレー南蛮のカレールーは市販のカレー粉をソバツユで伸ばすというシンプルな製法が多いが、同店のカレーラーメンに使われているスープはスパイスをオリジナルに配合していることが香りを嗅いだだけでも分かるぐらい、メリハリが利いている。
メニューによれば、このオリジナルスパイスを丸鶏で取ったスープで伸ばしているそうだ。カレー南蛮ほど甘みが勝ちすぎない、スパイシーな味が苦手な人にも受け入れられるような程よい刺激の、親しみ易いスープだ。

麺はコシの強い中太の多加水麺。スープには小麦粉でとろみがついていることもあり、麺が驚くほどスープを良く絡める。注意して口にしないと火傷必至だが、その危険を冒しても一気に啜り込みたいぐらいの美味しさに仕上がっている。

普通のラーメンなら煮豚なのだが、同店は豚しゃぶを採用している。カレースープとの相性を考慮してのものだろう。カレー味のスープという強い個性に負けない、良質の豚しゃぶである。

ライスは写真のようにラーメンの具やスープをかけて食べるもよし、ラーメンを食べ終わった後の残りスープに投入するもよし。自慢のカレースープはライスとの相性も最高である。

完食!
旨味もコクも刺激も高いレベルでバランスよく纏まっており、好き嫌いの差が出にくいラーメンだと思う。さすがは50年以上もの間、より多くの人に受け入れられるよう洗練を続けてきただけのことはある。皆さんもお試しあれ。
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