

古桑庵 (こそうあん) (甘味処 / 自由が丘)
自由が丘駅からカトレア通りを北上すること約5分ほど。緩やかな上り坂の途中、駅周辺の喧騒も静まってきたころに姿を現す古風な佇まいの一軒家。それが良質の和風甘味を饗する喫茶店『古桑庵』 (こそうあん)さんである(詳しい場所は上部リンク先を参照)。見た目は作りこそ立派だが、まるっきりの古民家なので入り口に掲げられた木製の看板が無いと「本当にお店なのか?」と戸惑う。
だがこれは、同店がオーナーである人形作家の渡辺芙久子氏の自宅を改装したものであることに由来している。『古桑庵』という店名はオーナーの祖父の友人にあたる、夏目漱石の娘婿にして作家の松岡譲氏の命名であると同店の入り口に記されている。


この日本家屋は大正末期建築とのこと。21世紀の日本では極めて貴重となった侘び・寂びといった言葉が、この玄関や店内から見られる日本式庭園を眺めているだけで感じ取れる。こうした空間に身を置くだけで不思議と気持ちが静まってくるとき、自分も日本の文化を愛する精神が魂に刻み込まれた日本人であることを再認識させられる。

古桑庵風抹茶白玉ぜんざい(800円:税込)
穏やかな光に照らされた窓際の席に腰を下ろしてより程なく、お待ちかねの甘味が運ばれてきた。

抹茶の中には丁寧に煮られた小豆と柔らかい白玉が入っている。決して力強く主張するわけではないが、抹茶の中にあってなお個性を失わない小豆の甘みと、マシュマロのようにフンワリとした食感の白玉が織り成す上品な味は、スイーツ激戦区である自由が丘にあっても光るものがある。
また瞠目すべきは抹茶の美味しさ。穏やかで苦味がないばかりか、抹茶にありがちな粉っぽさが感じられないのだ。抹茶味のスイーツが苦手な人にもお試しいただきたい逸品である。
あなたも『古桑庵』さんの静かな空間で、甘味を口にしながら猥雑な日常と掛け離れた時間を過ごしてみませんか?
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
