本来、枝豆を擂り潰して砂糖を混ぜ餡にして食べる食文化は宮城のみならず福島や山形にも存在し、その土地によって名称も異なる。それなのに仙台の“ずんだ”がこれだけ有名になったのは、やはり東北一の商業圏であることからメディアへ露出する機会に恵まれたためであろうか。
また、このお店の存在も“ずんだ”の訴求に一役買っていると自分は考えている。


ずんだ茶寮 仙台駅西口店 (ずんださりょう) (和菓子 / 仙台)
仙台駅西口、駅ビルの一階に店を構える『ずんだ茶寮』(ずんださりょう) 仙台駅西口店さん(上部リンク先も参照のこと)。同店は仙台土産の定番菓子“萩の月”でおなじみ(株)菓匠三全(かしょうさんぜん)さんがプロデュースした、郷土料理“ずんだ”をデザート感覚で気軽に味わえるカフェである。
テイクアウトスペースも併設されており、地元民はもちろん、土産の購入や列車の発車時刻を待つ旅行者の利用客も多い。このため図らずも同店が県外の人間に“ずんだ”を訴求する発信基地のような役割も果たしている。


店内の様子(写真左)、メニュー(写真右)
店内に入ると店員さんから、注文の前に荷物を置くなどして席を確保するよう促される。同店独自のルールである。指示に従って席を確保した後、注文を通す。待つ間に店内にあったリーフレットで“ずんだ”の語源を学ぶ。それによれば以下の二説が紹介されている。
(1)豆を打つ…豆打(ずだ)が転訛した
(2)伊達政宗公が出陣の際に用いる陣太刀(じんだとう)で豆を潰して食べたことから
あくまで個人的な見解ではあるが、2の説で紹介されている陣太刀は通常「じんだち」と発音するはずだから、自分は1の説を支持したい。


ずんだ餅(630円:税込)
…といったことを考えている間に、お目当てのずんだ餅が運ばれてきた。宮城県産の餅米“みやこがね”で作られた餅が三つ、その上に“ずんだ”がタップリとかかっており、これとお茶と塩昆布でセットとなっている。枝豆を元とする鮮やかなライトグリーンが目に眩しく、まずは見た目で楽しめる。

餡は砂糖の甘みが最小限にとどめられ、枝豆の甘みが上手く生きている。また枝豆の潰し方を(おそらくは)わざと荒くすることで、豆としての食感を維持している。どうやら菓子としての甘みよりも原材料である枝豆の個性を生かす方向を追求したようだ。単なる甘い餡であれば小豆を原料にしてもよいのだから“ずんだ”らしさをアピールするのであれば賢い選択といえるだろう。
だがそれによる不都合も少々ある。それは後口も枝豆のものとなってしまうのだ。どうしても枝豆=ビールのお摘みという思い込みがあるせいか、菓子としてこれを食べ続けることに若干の心理的抵抗を感じてしまう…。


そこで、お茶を啜り、付け合せの塩昆布を食べよう! 口の中が完全にリセットされ、気持ちも新たに“ずんだ”を楽しめるようになる。
とりわけ塩昆布を付け合せに選んだのは見事としか言いようが無い。単純に口の中の感覚をリセットするだけでなく、口中を一旦塩気で満たすことで“ずんだ”の甘みが最大限に強調されるのだ。丁度、高く跳躍するために瞬間深く沈みこんで反動をつけるような役目を果たしていると考えてもらうと分かりやすいだろう。この塩昆布、単なる引き立て役に留まらない名バイプレーヤーである。
また塩昆布が盛られた小皿が枝豆の形を模している点も芸が細かい。菓子の長所も弱点も研究し尽くしてきた老舗、菓匠三全さんならではの心配りといえるのではないだろうか。
仙台へ起こしの際は、皆様も『ずんだ茶寮』さんで“ずんだ”体験をされてみてはいかが? 自分も仙台を訪れる際は、定番になりそう。
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◆最後までお読み頂きありがとうございました。
