露鵬・白露山の両力士の解雇と共に、日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱・北の湖)が一連の問題の責任をとって辞任した。
昨年起こった横綱朝青龍の素行問題や時津風部屋での弟子リンチ致死事件、さらに先日発生した元若ノ鵬の大麻吸引問題など、どれ一つとっても相撲界を揺るがす大事件であったにも関わらず北の湖理事長は一貫して「部屋固有の問題である」などとして相撲界全体の体制改革に消極的な姿勢をとり続けた。今回の事件に到っては自らの部屋の力士が渦中の存在になったにも関わらず、弟子を信じる旨の発言を繰り返すばかりで毅然とした対応を取ろうとはしなかった。
今回の事件をよく考えてみれば、両力士とも法律的には未だ処罰の対象とはなっておらず、おまけに一貫して容疑を否認している。道義的な責任問題を考慮しなければ、罪が確定したわけでも当人達が認めたわけでもないのに解雇とは、いささか過剰な処分という解釈も成り立たないわけではない。しかし世間がそれを許さなかったのは、前述した北の湖理事長の態度が世間の反感を買ったからという側面があることは否定できないだろう。
もし北の湖理事長が、最初に両力士から大麻の陽性反応が出た簡易検査の段階で、二人に「真相が究明され、罪が確定するまでは」といった形で謹慎処分を言い渡し、自身も即座に理事長の職を辞していたらどうだったか? まかりなりにも組織の責任者が責任を取ったことで世論もここまで硬化しなかったかもしれない。
そしたら理事長の座は暫く誰かに代行してもらっておいて、ほとぼりが冷めたら理事長の座に返り咲くなんてこともできたのではないか。そして露鵬・白露山の二人も――法律的に無罪になるのが前提だが――謹慎処分によって「禊が済んだ」として復帰させることだって…いや、前述したように道義的責任の問題があるからこれは難しいか。だが少なくとも即刻解雇という厳しい処分は逃れられた可能性が無くは無い。
“土俵際”に追い詰められてもトコトン粘るのは力士の本能なのだろうが、どうも北の湖理事長の往生際の悪さと決断の鈍さが、結果として自身の引責辞任に繋がったし、弟子の即刻解雇にも繋がってしまったような気がしてならない。
「男が死すべき場所を誤るはあわれなものよ…」
(by前田慶次:花の慶次-雲のかなたに- より)

傾奇者恋歌
北の湖理事長に対し、こんな言葉が浮かぶのは自分だけだろうか?
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