

東京メトロ・麻布十番駅
先週末のこと。不安定な天候の合間を縫って麻布十番まで足を伸ばした。至近に六本木ヒルズを要するほどの都心に位置しながら、下町のような情緒が薫るこの町は、実は美味しい飲食店が数多く存在する町でもある。2000(平成12)年に地下鉄が開通するまでは“陸の孤島”と呼ばれるほど交通の便が悪かったため、地域の飲食店は地元民を相手に切磋琢磨を強いられたからであろう。


あん梅 ぎん香 (あんばい ぎんか) (魚介料理・海鮮料理 / 麻布十番)
本日ご紹介するのは、東京メトロ・麻布十番駅の4番出口から歩いて直ぐのところにある(詳しい場所は上部リンク先を参照)『あん梅 ぎん香』さん。外から見ると魚の干物が並べられているショーケースしか見えないので飲食店かどうか不安に思ってしまうが、実は干物販売店の奥に5席ほどのカウンター席が用意されており、そこで美味しい和定食を頂くことができるのだ。
店内はお世辞にも広いとは言えず、また、若い女性の先客が二人もいたので店内の写真を撮るのは断念。大人しく席に着き、注文を通す。ただ店内が狭いことにもメリットがあり、それは先客であった麗しい美女を間近でみることが…ではなく(笑)、厨房の様子や料理人の挙動がつぶさに観察出来ることである。
そして定食の出来上がりを待つあいだ厨房を観察すれば、ご飯を炊くための鉄釜や薪をくべるレンガ造りの竈を発見できることだろう。いまどき薪をくべ、竈で炊いたご飯が食べられる! これは期待せずにはいられない。

鮭ひもの定食(1,200円:税込)
暫くして運ばれてきたのが、今回注文した鮭ひもの定食。焼いた鮭の干物とご飯に味噌汁、副菜三品と一見シンプルな構成ではある。


しかし、ランチタイムの定食屋にありがちな、予め焼いておいた魚を暖めなおして出すのではなく、客の注文を聞いてからジックリ炭火で焼き上げられた自家製の干物。そしてわざわざ竈と鉄釜で炊かれ、丁寧にお櫃に移されていたご飯。これらを見ているだけで只ならぬ迫力に気おされてしまう。そして口にしてみれば、焼き魚もご飯も疑いのない美味しさで、事前に感じた迫力は伊達ではなかったことが分かるだろう。


肉厚であるにも関わらず中まで火が通っており、そのうえジューシーさは保たれている鮭の干物は脂が乗っている上に身の甘さが舌に心地よく、簡単そうでいて家庭ではおいそれと真似の出来ない旨さである。またお櫃に移すことによってベストコンディションが保たれたご飯は、よく炊けたご飯を言い表す「お米の一粒ひとつぶが立っている」という表現は、こういうご飯のことを指すのか、と深く感心してしまうほどだ。
思わずご飯のお替りをしてしまったが、前述した先客として店にいた女性たちも口々にご飯のお代わりを注文していたのには驚いた。妙齢の女性であれば体重や世間体を気にしてご飯のお替りをするなど躊躇われるのではないかと自分は思っていたのだが、それだけ同店のご飯と干物に魅力があることの証左であろう。まぁ時代が変わっただけかもしれないが…。
ともあれ、若い女性客にも思わずお替りをさせてしまうほどの実力を持つ『あん梅 ぎん香』さんの和定食。今度は貴方が試してみては?
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
