今回の旅行で、もっとも印象に残ったお店だったもので……。
ほりえラーメン (ラーメン / いづろ通駅、朝日通駅、天文館通駅)
そのお店とは、鹿児島市電・いづろ通電停から徒歩3~4分程度の路地裏、立体駐車場の近くにある『ほりえラーメン』さん(詳しい場所は上部リンク先、または記事下の地図を参照)。
掲げられた暖簾がなければ、とても飲食店が営業しているとは思えないような年季の入った木造建物の入り口をくぐると、
店内の様子
その外見から察せられる予想を裏切らない雑然とした(注:言葉を選んでいます)店内が待っている。
おおよそ巷に溢れる、店長がイキリ顔で腕組みした写真とラーメンに関する長ったたらしい蘊蓄文が店内にデカデカと掲載されているような有名ラーメン店とは対極にあるようなお店なのだが、この店を抜きにして鹿児島のラーメンは語れないとまで言わしめるほどのお店なのだ。
その理由とは、1960(昭和35)年の創業という60年近い歴史あるお店であるだけでなく、創業者である御年86歳(2018年10月現在:お客さんからの質問にご自身で回答)になる、おばあちゃんがお一人で、今もなお現役で厨房に立って運営されているお店だという事。
代替わりをせず創業者がそのまま厨房に立って運営されている、という観点で言えば、鹿児島はおろか、日本全国を見回しても屈指の長い歴史を誇っている飲食店と思われる貴重なお店なのだ。
閑話休題、私が入店したのは、開店直後の煩雑さから一息ついたころ。割と店内に余裕があって並ばずに着席できた。
おばあちゃんが配膳してくれた、鹿児島ラーメンのお約束である大根の漬物を齧りながら暫く待つ。
カウンター席だったので、おばあちゃんの仕事ぶりを間近に見れたのは幸いだった。おばあちゃんは実に手際よく麺を茹でながら、一度湯を張って予め丼を温め、その湯を捨てて茹で上がった麺を先に丼に入れてから、具を載せ、タレ等を入れ、最後にスープで丼を満たした。その一連のキビキビした動作は、とても卒寿が近いご老人とは思えない鮮やかなものだ。
なお一般的なラーメン店では、先にタレを入れた丼へとスープを注ぎ、後から茹で上がった麺を入れるが、おばあちゃんの手順は逆。おばあちゃん独自のスタイルなのかと思っていたら、東京に帰ってから調べた結果、鹿児島では先麺/後スープの調理法はポピュラーの模様だ。
ラーメン/普通(300円:税込み)
ライス/普通(80円:税込み)
さて、手際に感心しているうちに、ラーメンが着丼。おばあちゃんが配膳する際に発する「いっぱい食べてね~」という言葉も心が和む。
同店のラーメンは普通 or 大盛りの二種類のみで、あとはニンニクを入れるかどうかの選択ができるのみという極めてシンプルな構成。
それにしても、いまどきラーメン一杯300円というのは驚愕である。
そしてサイドオーダーのライスは普通盛りで80円、しかも炊飯器ではなく羽釜炊き。ラーメン共々、恐縮するレベルの値段設定である。
そんな値段設定にもかかわらず、澄んだ醤油スープのラーメンは、オーソドックスだけどチープさを感じさせない佇まい。
透明感のあるスープは鶏ガラベースのアッサリ醤油味で、シイタケの出汁もよく効いていて美味しい。一方の麺は軽くウェーブのかかったストレートタイプで、思いのほか量が多い。心持ち柔らかめの茹で加減が、このシンプルなスープに良くあっている。具の種類や量は控えめだが、このオーソドックスな構成のラーメンなら、これでバランスが取れていると思う。
久しぶりにスープも残らず啜ったあとは、木箱にお代をお客が自分で放り込むをいう、まるで田舎で農作物を売る無人販売所のようなシステムで精算。おばあちゃんは「お代は○○百万円ね~」という昭和の定番ギャグも忘れない。
最後、おばあちゃんに「また来てね~」と声をかけられ、お店を後にした。
正直、私が次に鹿児島を訪れることができるのがいつになるかは分からない。
でも、おばあちゃんが健在のうちに、また訪れたいと強く思った。
皆様も訪れてみては?
仙巌園から望む桜島
鹿児島旅行追想記:完
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