そのうち、横綱朝青龍関の仮病疑惑がワイドショーで大々的に報じられるようになると、この事件は人々の脳裏から忘れられ、そのまま風化していくかと思われた。ところが…。
大相撲:時津風部屋力士急死・親方立件へ 「通常のけいこ」一転、暴行認める
(毎日新聞)
時津風親方(元小結双津竜)が警察の任意の事情聴取に対し、酒席で親方自身がビール瓶で被害者の額を殴ったという暴行の事実を認めていたことが判明した。また親方は弟子三、四人が稽古場の調理室裏で、被害者に殴る蹴るの集団リンチを加えたという弟子たちの暴行についても認めているとのこと。
警察では傷害及び傷害致死容疑での立件に向け、暴行と死因との因果関係を慎重に捜査しているそうだ。まずはこの事件が風化しなかったことを喜びたい。
しかし当初は素知らぬ顔で「通常のけいこだった」と遺族に説明していたはずの時津風親方。ここに来て暴行の事実を認めたというのは、心を揺るがす何がしかの出来事でもあったのか。もっとも時津風部屋の祖である偉大なる大横綱、双葉山ですら、連勝が69でストップしたときに
「イマダモッケイタリエズ(未だ木鶏たりえず)」

双葉山定次―相撲求道録 (人間の記録 (95))
との電報を親しい人に打っている。木鶏とは木彫りの鶏のように何事にも全く動じないことを表す様だが、21世紀の世になっても未だ破られぬ大記録を打ち立てた傑物であっても「未だ木鶏たりえ」なかったのだから、親元から預かった弟子を暴行で死なせてしまうようなレベルの人間では、動揺を抑えきれなかったとしても無理は無い。
警察の捜査の進展次第では、相撲協会としては朝青龍問題以上に辛い試練となるだろう。しかし協会がここで逃げの姿勢をとれば、競技人口の減少や人気の凋落に歯止めがかからない大相撲の現状に自ら止めを刺すことになりかねない。相撲協会が対応を誤らないことを臨みたい。
ところで、相撲界には昔から「かわいがる」というスラング(隠語・業界用語)がある。時に制裁の意味合いも含まれる厳しい稽古のことだ。その「かわいがり」を拡大解釈して暴行を加え死者まで出し、名門・時津風部屋の名に傷をつけたのだ。時津風親方も暴行に加わった弟子たちも、いずれあの世で大師匠・双葉山に再会した時にはタップリと「かわいがって」もらえることだろう。
◆最後までお読み頂きありがとうございました。
タグ:大相撲
















