2007年08月18日

『人間失格』が再び売れている意外な(?)理由

太宰「人間失格」、人気漫画家の表紙にしたら売れて売れて
読売新聞

日本で最も有名な小説家の一人である太宰 治(だざい おさむ)。自分ごときが安易に解説するのは恐れ多いので、下にリンクを張っておく。

太宰治 - Wikipedia

彼の遺作であり、自伝的小説といわれ、遺書のような作品と言われる代表作『人間失格』の表紙を、『ヒカルの碁』や『DEATH NOTE』の作画で知られる人気漫画家、小畑 健(おばた たけし)氏が描いたイラストにした集英社文庫の新装版が、古典的文学作品としては異例の売れ行きを博しているという。

070818_08.jpg
人間失格 (集英社文庫)

古典文学作品に人気漫画家のカバーイラストという組み合わせに関して編集部は「『いかにも名作』という路線からの脱却を目指して」依頼をしたとのことだが…。

編集者サイドのコメントが、どうにも「取って付けた」感で満ち溢れているような気がするのは自分だけではあるまい。若者のみならず、現代人全体の活字離れが危惧されて久しいが、それをなんとか防ごうと出版関係者は四苦八苦しているとは聴いている。

あまりハッキリ言うのは憚られるので白字反転させておくが「有名漫画家のイラストの力で買わせようとしている」のはバレバレではないか(苦笑)。まぁ記事を読む限り、案の定「このコラボ(共同作業)はすごい。カバー買いしました」との声もあるそうなので、編集者サイドとしては狙い通りといったところだろう。

一部の愛好家の中には「挿絵目当てで本を買うなんて…」と眉をしかめる方もいらっしゃるようだが、しかしこうした現象は、なにも今に始まったことではない。

江戸時代後期のこと。原作を柳亭 種彦(りゅうてい たねひこ)、挿絵を歌川 国貞(うたがわ くにさだ)が担当した合巻本(ごうかんぼん:現代で言う挿絵入り長編小説)、『偐紫田舎源氏』(にせむらさきいなかげんじ)が大ヒットした。これに関し『南総里見八犬伝』で有名な滝沢 馬琴(たきざわ ばきん)が、

「あれは種彦の戯作よりも国貞の挿絵で売れたようなものだ」

と言ったとか。これを馬琴の種彦に対するジェラシーによる発言と取ることも可能だが、江戸の昔から日本人は挿絵目当てで小説を読んでいた歴史的証明であろう(笑)。挿絵とはあくまで文字媒体の理解補助が目的なのであって、挿絵目当てで小説を読んだり、購入したりするというのは本末転倒も甚だしいのだが、案外そうした矛盾に満ちた行動を取るのも人間という生き物の魅力なのかもしれない

「やっぱり、人間って… 面白!!」
(byリューク:DEATH NOTEより)

ともあれ、本件のヒットによって、古典文学×人気漫画家による挿絵というセットは増えていくのではないか。まぁ最初は挿絵目当てだったとしても、その中のホンの一部でもいいから、実際に内容に触れ、古典文学のよさに目覚める人が出るのなら、一概に批判されるべきではないのかもしれない。
ヾ(@~▽~@)ノ


これらもいつか、人気漫画家による挿絵に…。


posted by 只今 at 22:09| 東京 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 雑感:社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自分もおなじく「装丁で買ってそれで文学にめざめて・・」みたいな読み方でもいいかと思います。
ていうか、今装丁専門のデザイナーとかもいるんだし装丁から買わせるってのもいい事だと思うんですけどねえ・・
Posted by 記号士 at 2007年08月20日 09:25
>ていうか、今装丁専門のデザイナーとかもいるんだし装丁から買わせるってのもいい事だと思うんですけどねえ・・
実際、天野喜孝さんが挿絵を描いた江戸川乱歩推理文庫なんて、雰囲気ピッタリでしたし、一概に否定されるべきものではないような気もします。
Posted by 只今 at 2007年08月21日 00:18
挿絵の力って、大きいですよね。『不思議の国のアリス』も、挿絵のおかげで人気が出た本の1つ。ジョン・テニエルに挿絵を描いてもらえなかったら、私が読むことはなかったかもしれません。
Posted by valvane at 2007年08月22日 14:12
>valvaneさん
>挿絵の力って、大きいですよね。
もしかすると、日本が他国と違い、漫画が文化として育った理由の一つには、挿絵の存在が大きいのかも知れません。
Posted by 只今 at 2007年08月22日 23:34
>日本が他国と違い、漫画が文化として育った理由

うわぁ、(学生の時の)専門と被るよぅ〜;;
こんなお題を出されたら、それこそレポートが書けてしまいます。(ヨーロッパ文化史)

ま、端的に言えば、これも「大陸文化と島国文化の違い」から来る相違で説明が付くかと…。
Posted by valvane at 2007年08月23日 15:08
>valvaneさん
>「大陸文化と島国文化の違い」から来る相違で説明が付くかと…。
興味深いですね。いつか機会があれば、じっくりお話を伺いたいです。
Posted by 只今 at 2007年08月25日 00:06
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